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忍者は如何にして価値ある情報を集めたのか (Part 2/3)

この記事は、COMMU忍(NIN)CATION様からご寄稿いただいたものです。

前回のコラムでは一般的に抱かれる忍者のイメージ、および近年の研究で明らかになってきた忍者の実像とはどのようなものかについてお伝えしました。今回は、「有益な情報」を得るために忍者は具体的にどのようにして活動していたのか、その方法を見ていきましょう。

陰と陽の活動法

皆さんが最初に想像されるのは、夜中にお城に侵入して話を盗み聞いたり巻物を盗み出したりする、などのシーンではないでしょうか。このように人目につかないよう陰で働く忍者を「陰忍(いんにん)」と言います。

他方、人混みに紛れて忍者と知られることなく自由自在に活動する「陽忍(ようにん)」という忍者がいました。より多方面から情報を得るための「七方出(しちほうで)」という変装法を使いました。

「七方出(しちほうで)」と呼ばれる変装法

七方出で変装するのは、主に以下のようなものです。

1. 商人: 薬売りや呉服売りなど

2. 放下師(ほうかし): 大道芸人

3. 猿楽(さるがく): 日本の古代・中世に行われた芸能。後に能・狂言となった

4. 僧侶: 出家して仏門に入って修行をしている人

5. 虚無僧: 禅宗の一派である普化宗(ふけしゅう)の僧のこと。深い編み笠をかぶり尺八を吹いている

6. 修験道者: 山伏(やまぶし)とも言われる密教の僧侶。帯刀が許されていた

7. 常の形: 農民、旅人など

以上のような、関所を通過しやすい身分の様々な姿で人の中に紛れて活動しました。

特に当時のお寺は、今でいうカフェや学校、サロンのようなもので多くの人が集まるため、僧侶に変装して多くの情報を得ました。また商人としては、例えば薬屋になれば、お客さまとの会話からその土地の風習や食習慣、流行り病から政治への不満、土地の人間関係も知ることができます。

変装と情報収集に求められる技量

そのように変装して、違和感を持たれずたくさんの情報を得るために、それぞれの分野の専門知識が必要でした。そのため忍者は必要に応じてお経を唱えたり能を演じることができました。また驚くことに、それぞれの変装の身なりに合うよう着物の匂いを変えて、方言を操り、職業に合わせて歩き方まで変えたのだそうです。

情報収集のテクニック

そして相手から価値ある情報を引き出すために、忍者は以下のように振る舞いました。

1. まず笑顔で挨拶して相手の警戒心を解きます

2. 次に笑顔でうなずいて聞き役に徹し、決して相手を論破せず

3. 相手との信頼関係を築きます

4. 重要な情報を得るために、話を展開して多くの情報を聞き出します

現代でも戦略的交渉人や敏腕マーケターになれそうですね!こうして様々な手法で情報を得ていた忍者ですが、それだけでなく他流忍者とのネットワークも広く張り巡らせ、情報を交換し合っていたそうです。そうは言っても、情報の真偽を見極める嗅覚と判断力、そして相手との信頼関係は不可欠だったでしょう。

プロとしての忍者

忍者は自分が忍者であることを家族にも知らせず、農民や町人として生きていたそうです。そうしながらも、常に新しい知識を学び、技を向上させるための研究や修行を続けました。そうして能力を高めることが任務の成功につながるからです。

そのモチベーションの源泉は、前回お伝えしたように大切な家族や地域の安寧を守ることです。不安定な時代でしたが、忍者は満たされない現状に不平不満を漏らしたり嘆いたりするのでなく、彼らにできる最大限の力を発揮しました。

忍者について もっと学びたい方へ

次回は、忍者が任務達成のため常に行動し続けることができた秘訣~その揺るぎない精神力の秘密~をお伝えしますので、お楽しみに!

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