この記事は、COMMU忍(NIN)CATION様からご寄稿いただいたものです。
これまでのコラムで、忍者は戦闘要員よりも諜報員のような存在だったこと、変装術を使いながら有益な情報を収集したこと、その真の目的は大事な家族や地域を守るためだったことなどをお伝えしました。
今回は、忍者が命を危険にさらしながらも戦いを避け、常にミッションを実行することができた秘訣について見ていきましょう。
忍者にとって最も重要なことは、何を置いても生還することでした。万が一任務の途中で相手に気づかれた場合を想定してみましょう。
いくつかの対応方法があります。
➡ 負けた相手は恨みを持ち、なんとか探し出して仕返ししようとするでしょう。そこから負のループが発生します。
➡ 身元がバレると、即、戦の火種になります。逃げ場がないと判断した忍者は、捕まる前に自らの顔を判別できないほどに傷つけたとか。そして拷問にあっても決して口外しなかったそうです。
➡ プライドや仕事の成果よりも命が最優先。命さえあれば達成するまで何度でも挑戦することができます。
できる限り戦いを避けて生きて帰ることが、ミッションを果たし自他共に存続するための必要条件だったのです。
過酷な条件のもと命を捨てる覚悟で、でも必ず生きて帰るよう任務にあたるという矛盾したことは並大抵の精神力ではできなかったでしょう。これらを可能にした秘訣は、大きく分けると二つあります。
ひとつ目は、九字護身法という(儀式のような)方法です。
臨兵闘者皆陣列在前という9つの文字を呪文のように唱えながら、手で印を結びます。これにより心の準備を整え、神仏に護られているという強い気持ちで行動して任務に当たったのです。この方法は忍者だけでなく戦国時代の武士も行っていたそうです。今の時代では、アスリートが試合前に行うルーティンに近い行動だと言えるかもしれません。
二つ目は、忍者が朝晩行ったという瞑想です。
現代になって見直されている瞑想の効果は皆さんもご存知の通りです。そして、瞑想の際に用いた忍者の呼吸法も、最近の実験によってその効果が実証されています。実は忍者の代表的な呼吸法は二つあり、長い距離を歩き続けるための呼吸法と、心身を落ち着かせ、内観するための呼吸法がありました。瞑想の際に用いたのはこの後者の呼吸法です。
日々どんなに鍛えているその道の達人でも、過度の緊張状態が続くとストレスに耐え切れず、心身に支障が出てパフォーマンスが下がるでしょう。
科学や医療がまだ整っていなかった時代に、忍者は呼吸と瞑想で自らを整え、九字護身法を用いて行動を促しミッションを実行しました。もちろんこれだけでなく普段から食べ物に気を付け、健康法や薬学、対人心理学の知識などを駆使しました。
このシリーズの最後にお伝えしたいことがあります。
忍者の「忍」という漢字を分解してみましょう。「忍」という字は「心」の上に「刃」があることから、
(1)移ろいやすい心に刃を置いて常に自らを律した
(2)人を傷つける刃を自らの心に置くことで無謀な行動を律した
(3)刃を突きつけられるような状況でも動じない不動心を表す
などと言われます。
そして忍者は、様々な技を悪用することなく、私利私欲のために任務を行わないという正しい心を自らに課しました。
変幻自在に姿を現したり人を惑わせるような技を使えたりする忍者ですが、その行動の真の目的は「平和」な暮らしです。
時代が変わっても、私達が望むことは同じなのです。
以上、3回にわたってお届けした忍者記事、いかがでしたでしょうか。
私達がこうして忍者のことをお伝えするのには理由があります。それは「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」ことが、不安定な現代社会においても大切なものを見失わず、誰でもより良く今を生きることにつながると思うからです。今回の記事を通して忍者という存在とその生き方に興味を持っていただけたなら幸いです。
もっと忍者の知恵を知りたいという方は、ぜひCOMMU忍(NIN)CATIONのセミナーを参考にしてみてください。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください!
またお目にかかれることを楽しみにしています!
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