Created for expats living in Japan

外国人コミュニティーの葬儀 - 悲しみを乗り越えて Life goes on -

この記事は、ロバート・ホーイ様(FUNERAL SUPPORT SERVICES)からご寄稿いただいたものです。

私の会社は主に周辺地域の葬儀社へのエンバーミングの提供をはじめとし、日本でお亡くなりになった外国人の本国送還を専門としていますが、外国人コミュニティー向け葬儀サービスを提供させていただく機会も年々増えています。日本国内の外国人コミュニティーも規模が大きくなりつつあり、それぞれに独自の文化や宗教がありますが、私の会社もこれまでにあらゆる宗教・信仰に対応して来ました。私は葬儀を請け負う立場の人間として、ご遺族のさまざまなニーズに精通し、お客様のご要望にお応えしなければならないと考えています。

私は30年前に来日するまで、カナダの葬儀社に葬儀ディレクターとして5年間勤務していました。カナダはさまざまな国籍を持つ移民の国であり、コミュニティーはそれぞれに独自の繁栄を遂げています。そしてこれらのコミュニティー内にはそれぞれの文化に合ったサービスを提供している葬儀社が多く存在します。私の夢はここ日本において自分の葬儀社を設立し、多様な外国人コミュニティーのニーズに合った葬儀サービスを提供するすることでした。そして5年前、ついに私はその長年の夢を叶えることができました。

生後5ヶ月の赤ちゃんのエンバーミング - エンバーミングのメリット

ある静かな土曜日の朝、私はベトナム人女性からの電話を受けました。それは、彼女の生後 5か月の赤ちゃんが亡くなり、直葬(葬儀も何もせず、そのまま火葬場へ行き火葬を済ませること)を手配したいという依頼の電話だったのです。私は詳細を書き留め、ひとまず彼女に「病院から当社ケアセンターへの移送手配をさせていただくこと」そして「月曜日に役所で彼女に会い、赤ちゃんの死亡届を済ませる必要があること」を伝えました。

どなたかが亡くなられると、市区町村役場に死亡届を提出することが法律で義務付けられています。私たちはこのプロセスを完了するため、常にご家族に同行させていただいています。役所で手続きの待ち時間を一緒に過ごしていると、彼女の赤ちゃんに起こった悲劇と、彼女がどのように対処したかについて話してくれました。彼女の悲しみは当然のことながらとても深いものでした。

赤ちゃんの両親はまだ若く、葬儀費用の心配から最も経済的な方法である直葬を選択したのです。そこで私は彼女に、無理のない手頃な料金で葬儀式サービスの提供が可能であることを説明しました。とくにお子さんを亡くされたご両親の悲しみの深さというものは計り知れないものがあります。私はエンバーミングを施術することのメリット、そしてどのように赤ちゃんを抱っこすることができるのか、さらには火葬を急ぐ必要がないことを説明しました。赤ちゃんを亡くされたご両親にとって、お子さんを抱っこ出来ることがいくらかの心の安らぎとなることがあります。

その数日後、ご夫婦のお友達や職場の同僚の皆さんにもケアセンターにお集りいただき、生後わずか5か月の赤ちゃんを天国へ見送るための集いの場を設けさせていただきました。皆さんで語り合い、棺に花をたむけ、そしてご夫婦は交代で赤ちゃんを抱っこされていました。集まられた皆さんはとても切なそうにされていましたが、周囲からご夫婦に寄せられたサポートはとても心温まるものでした。赤ちゃんの祖母は遠方からオンラインで参加し、カトリックの祈りを捧げました。今の時代、インターネットの普及によって世界のどこに居ても人々がオンラインで集えるようになりました。

そしてその翌日、私はご夫婦と赤ちゃんを火葬場にご案内しました。火葬が始まるまでご夫婦は一緒に赤ちゃんを抱っこし、優しく揺り動かしながら最期の親子の時間を過ごされました。

帰りの車の中、私は奥さんから「赤ちゃんとこんなに有意義な時間を過ごせるとは思わなかった」と、感謝の言葉をいただきました。このような辛い出来事を乗り越えなければならない若いご夫婦のために、少しでもお役に立つことができた、私はこのことに大きな意義を感じました。私がお世話をさせていただくご家族にいつもお伝えすることがあります。それは「決して慌てる必要はありません」ということです。ひとまず落ち着いて深呼吸をすること。なぜなら、愛する人と過ごせるのはこれが最後になるからです。最後の最後の瞬間まで、後悔のないように納得のゆく時間を過ごしていただきたいのです。

海洋散骨とプライベート葬儀のサービス

そして新たなるご依頼の電話が鳴りました。あるイギリス人男性から、がんで自宅療養中の奥様が今にも亡くなりそうだとのご相談を受けました。ご主人は奥様の葬儀の事前相談のため、いくつかの葬儀社と連絡を取られていたようですが、日本語という言葉の壁があったため、最終的に英語が通じる私どもを選んで下さいました。当社をご信頼下さったことを大変光栄に感じ、奥様に万が一のことが起きた際には、尊厳のあるお別れが出来るようにベストを尽くすことをご主人とお約束しました。そして次の週末の午前5時、ご主人からの電話が鳴りました。私はすぐにベッドから出て身支度を整え、搬送車でご自宅へと向かいました。

私たちは奥様を自社施設へお連れし、エンバーミングを施しました。そして同日の午後、奥様のご遺体を住み慣れたご自宅の寝室に安置させていただきました。ご主人は奥様のご様子を見られて涙を流しながら微笑んでいらっしゃいました。そして奥様がまるでたった今、美容院から戻ってきたようだとおっしゃいました。闘病生活によってお身体は消えそうなほどに細くなられていましたが、エンバーミング施術後の奥様のお姿にご満足されたことで、弔問にお見えになるご友人達に見ていただけると興奮気味でいらっしゃいました。

エンバーミングはいくつもの複雑な手順を駆使することで、故人様がお元気だった頃のお姿に近づけ、復元することができるのです。

ご葬儀を終えた後、ご主人は奥様のご遺骨をどのようにされるかを検討されていました。奥様が「スタートレック」のファンだったということもあり、ご遺灰をロケットで宇宙空間へ飛ばす「宇宙葬」もご検討されていましたが、最終的には私の会社が提供する「海洋散骨サービス」に決定されました。ご主人は数年後には日本を去り、母国イギリスに生活の場を移すことを決められていたため、奥様のお墓の世話を任せられる方がいらっしゃらないからです。 そこで、奥様が生前愛されていた場所である湘南・江の島の沖合でシンプルな散骨の儀式をご提供させて頂きました。

海洋散骨クルーズの当日は快晴に恵まれ、富士山がセレモニーの美しい背景となりました。奥様お気に入りの曲をBGMに、お好きだったカルピスソーダを海に注ぎ、奥様がお好きな花の花びらを光輝く湘南の海に散らしました。ご主人は奥様をご自分お一人だけで見送りたく、このような完全プライベートな海洋散骨サービスを選択されました。私はご夫婦の最後のひと時に立ち会わせていただき、とても光栄に感じました。ご主人はこれから先も奥様に会うために、江の島まで車でお出かけされることでしょう。

外国人コミュニティーの皆様に寄り添う葬儀ディレクターというお仕事をさせていただいておりますと、たくさんの感慨深い出会いの機会があります。私はご遺族の深い悲しみに向き合い、このような困難な時期を乗り越えるためのお手伝いをさせていただく度に、大きな達成感を感じています。

英語でサポートを受けられる葬儀サービス

フューネラル サポート サービスは、ご遺体の海外搬送の手続きやエンバーミングなどのサービスを提供する、IFSAの認可企業です。日本語と英語のバイリンガルでサービスを提供しているため、言葉の心配も必要ありません。ご質問やご相談は、お気軽にお問合せください。