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精進料理とは?- 身延山で味わう伝統食文化 -

この記事は覚林坊様からご寄稿いただきました。

身延山は山梨県の南に位置する人口約1万人の身延町の中にある、仏教寺院で日蓮宗の総本山。日蓮が身延山に入って約750年。樹齢400年のしだれ桜、五重塔、大本堂には加山又造の龍の天井画、三門には仁王像と内部には16羅漢像がおさめられており、三門から久遠寺に続く287段の石段まで両脇には、当時これらを建立した、日朝上人(11代目法主)のお手植えの杉の木が今も高々とそびえたっています。

この三門から、下へ身延山の門前町が続き、かつてそこは全国からの参拝者のお参りの楽しみの一つでもあった、お土産店や飲食店でにぎわっていました。しかし近年、町の過疎化が進み、宗教自体が日本全体で衰退し始め、「寺院消滅」「墓じまい」などという本が出るくらい、日本全体で仏教・寺の衰退が著しいものがあります。しかし、寺町には様々な習慣が残っており、人々は歴史と、文化と、自然の中でそれらと共存し、脈々と受け継ぎ、はぐくまれています。

その一つが、食文化で、和食が文化遺産(2013年ユネスコ無形文化遺産)になったり、日本人にとっても、和食は残さなくてはならない文化伝統になってきています。

精進料理とは?

この寺町には、それらのルーツともいえる、精進料理という、修行僧らが心身ともに精進するための食に対する考え方が、今も随所に残り、町民の生活や、町の特産物となって、形を変えて残っています。この町の特産は、寺町ならではの湯葉・あけぼの大豆(通常の二倍以上の大きさと栄養価の大豆)。

これらを貴重なたんぱく源として、修行僧らは、宗派や流儀によって多少違えども、精進料理のルールにのっとって、心と体の修行を繰り返してきました。

一般的に精進料理では、肉や魚などを使用せず、野菜、穀類、海藻類、豆類、果実などの植物を使います。バターやチーズなどの乳製品も使われません。さらに、「五葷(ごくん)」と呼ばれる匂いが強い野菜、例えばネギやニンニク、ニラ、玉ねぎなども、欲情や心を乱すものとして使用しないことになっています。

ですが、そもそも様々なルーツや、ルールがあり、宗派や修業のスタイルによっても食べられているものが違ったりもしているようですが、そこには原理原則があり昔の方々の知識の深さに驚かされます。今、日本にもビーガン・ベジタリアン・ハラルなどと、様々な精進に似た世界の食の思想が入ってきているが、精進料理はそれらと同じ、日本独自の仏教にまつわる心と体の鍛錬のための食道(じきどう)です。

 

精進料理を味わえる場所

ここ身延で、今も現代的な形でそれらをアレンジし、一般の観光客にも提供し、親しまれている寺が東京から2時間半のこの身延山内にあります。

身延山東谷の宿坊「覚林坊」。先述の日朝上人開山の550年の目と学業守護お寺です。ここでは、寺というかしこまった敷居を少し下げ、気楽に湯葉やあけぼの大豆、豆腐の料理を体験していただこうと「おてらんち」(お寺でランチ)を6年前からスタートし、和食離れ、身延山衰退を食い止めようと活動を始めました。

その御膳のにはタンパク質・炭水化物・ビタミンのバランスよく、目にも鮮やかな精進料理が並びます。デザートには豆乳のソフトクリームに山梨のフルーツコンフィチュールが4種類添えられる。ここ山梨はフルーツ大国で、1年中美味しいフルーツに事欠かしません。ですが、同時に廃棄されてしまうフルーツも多く、それらを活用し、お寺自家製のコンフィチュールを作っています。こうしてできる現代風精進「おてらんち」は参拝者を満足させ、寺参りを楽しませています。

全国どこにいても食べたいものが便利で簡単に手に入る昨今。時には精進料理の世界をのぞいて、食べること、食べさせていただけること、今日食べられる幸せ、食べ物が体を作ること・・・等など、食道(じきどう)体験してみませんか?

下の画像をクリックして詳細をご覧ください。